2013年8月15日木曜日

全国英語教育学会(JASELE)第39回北海道大会参加記録(その1)

去る8月10日(土)11日(日)に北星学園大学にて開催された表題の大会に参加してきました。
当初は発表する計画だったのですが、手違いがあり発表はなくなり、それで北海道行きも一度頓挫しました。しかし、家内が札幌在住の旧友と20年ぶりに連絡が取れて北海道に行くことになったため、一緒について行くことにしたのです。それで、学会参加は第一日目のみとなりました。

私が拝聴した自由研究発表は以下の通りです。

1.「特定の課題に関する調査」に見る中学生の英語発進力:CEFR基準特性の観点から(根岸雅史・投野由紀夫・長沼君主・工藤洋路)※会場がB301から変更になっていて、少し迷いました。
東京外語大学OBの先生方による共同研究です。細かいデータを提供していただいたので、結果に関する説明は納得がいくものでした。その結果は、対象が中学生で、発話産出は自ずと限られたものになる、特に語彙が限られているため、使う語もlikeやwant toなどが繰り返される傾向ということでした。これらは指導から1~2年かからないと産出されないということが明らかになり、かなりの時間を要するという結論です。

2.物語の主人公が持つ「目標」の読解:学習者の推論生成と記憶表象の観点から
(卯城祐司・名畑目真吾・長谷川佑介・木村雪乃・濱田彰・田中菜採:筑波大学)
物語文の読みとりで、主人公が持つ「目標」の部分を明示的に読み取らせるのと、そこがないかわりに手がかり文を読ませて「目標」を暗示的に与えた文を読ませてどれだけ元の物語が再生できるか、という研究。その手がかり文を統制手がかり条件と目標手がかり条件に分け、さらに直後再生か、遅延再生かで、結果成績を比較。結果分類が多岐に渡るので理解が大変だったが、直後再生の場合は、明示的でも暗示的でも差はなし。遅延再生の場合には、統制手がかり条件は目標手がかり条件(目標明示)より劣る。結果の考察として、統制手がかりから推論で「目標」をある程度できる部分は直後にテストされた場合(直後再生)は、あまり自信がないけれども、それを素直に再生すると、明示された場合とそれほど変わらない。しかし、時間が経つと、その自信のなさが、記憶の定着に影響して、遅延再生では結果が劣る。やはり、どこかで、きちんと答え合わせしてあげて、「その推論は正しかった!」という実感を与えてあげることがせっかく手がかりから導き出した正確さのある推論を後押ししないということ。

3.多義語知識習得における付随的語彙学習の効果:リメディアル教育現場での検証(星野由子・阿部牧子:東京富士大学)
付随的語彙学習が起こるためには目標語の意味を推測しなければならないが、未知語に遭遇したとき読み手が取るストラテジーとしては高度。語彙数が限られている初学者や英語が不得意な学習者は未知語に遭遇するとこれを無視するという方策に走ってしまう。この研究は、takeに焦点をあて、a時間がかかる b連れていく・持っていく c乗る d買う e口に入れる の五つの語義が正確に把握されているかを和訳を求めることで事前・事後確認。間にリーディングマテリアルを読ませ内容理解問題と理解度を自己判断させる。結果は事後テストの方が得点が高いが意味によってばらつきがある。考察:コロケーションの問題がある(「かかる」の意味の目的語が事前事後で異なっていた、「つれていく・もっていく」目的語が生物か無生物か)←メンタルレキシコンの中で別々のエントリーになっている可能性あり。
多義語の習得には以前から興味があったのだが、動詞takeに関しての限定的な結果であったので、今後名詞や副詞などいろいろな語で研究が進むとよいなと思う。

(続く)

追記:8/15誤字訂正